道端科学の小箱

このページでは当実験教室で作成した実験機器や提供した実験などを紹介しています。気になった科学の話題も紹介する予定です。

プラネタリウムドーム

プラネタリウムドーム  11,12月に天体の動きの観察を模擬装置で行うため、自作プラネタリウムドームを使用しました。右に写真を示します。前職で使用していたものを参考にし、一部改良を加えた上で新たに製作しましたました。適当な台にのせることで50 cm程度浮かせて設置されています。中へは浮かせてできた隙間(左下に見える)から出入りします。外からは見えませんが、内部には中心に投影器が設置されています。
 ドームは疑似半球殻で、赤道部の水平方向直径は2400 mmです。半球殻ドームとはいっても実際には球面は作れませんので、多面体で近似しています。材質はダンボール製で、強度を出すため通常よりやや厚手のものを使用しています。ダンボールを二等辺三角形のような形に切り出したものをぐるりと一周12枚貼り合わせています。幅は経度にして30度分になります。これを折ってとなり同士とくっつけて球殻にしていきますが、折り曲げる際には外側にあたる部分に切れ目を入れて内側に向けて曲げていきます。写真から、切れ目が入っているところから折れている様子がわかることでしょう。この折り目(切れ目)はダンボール1枚当たり5本あることも写真からわかりますが、最も下の折り目が地平線(赤道)の位置で、折り目は緯度にして15度ごとに入っています。ただ、75度の位置から上の天井部分(天頂部)は実際にはなく、別体になっています(2枚目の写真を参照のこと)。ダンボールを丸く切り出し、周囲から中央に向けてくさび状の切れ目を入れてこの切れ目をふさぐようにとなり同士を合わせて皿状の天頂部を作り、はめ込んでいます。上部(北緯75度の位置)に黒いフェルト布がかぶせられていますが、これははめ込み時にどうしても残ってしまうすき間を埋めるためのものです。したがって、上で「二等辺三角形のような形に切り出した」と書きましたが、実際には北緯75度から上のない台形のような形に切り出しています。
ドーム天井部  このように、天井部分を別体にすることの利点は、ひとつは天頂近くをシームレスにできることです。二等辺三角形ダンボール12枚を貼り合わせていくと天頂の位置で12枚の細長いダンボールが集まってくることになり、切り出し精度が要求されると共にきれいに貼り合わせることが難しくなってきます。もうひとつの利点はドームを一人で組み立てることができることです。実際に組み立てるとわかるのですが、天頂部には外からは手が届かないのです。設計する段階でこのことに気づいており頭を悩ませていたのですが、天井部分を別にすればよいと気づいたときには「勝った」と思いました(大げさかもしれませんが)。
 実際の製作では、ダンボールは900×1800サイズのものを20枚購入しました。大切なのは段ボールの筋が短辺方向に入っているものを選ぶということです(筋が緯線に平行になるため緯線に合わせてきれいに折ることができる)。また、ドーム内側は白色のものを選びましたが、表面にでこぼこががなくきれいであれば通常の「ダンボール色」でもよいのではと思います。切り出し形状については、直径(2400 mm)、構成枚数(12枚)、折り目間隔(緯度15度相当)を決めればあとは高校数学である三角関数の知識と関数電卓を使って決めることができます(高校生にとってはいい問題だと思います)。組み立て時はガムテープで貼り合わせていきますが、繰り返し使うことができるよう、ガムテープを貼るところにはあらかじめ保護用ベースとなる別のガムテープで補強しておきます。貼り合わせではすき間なくピッタリ合わせて貼り、光の漏れ込みを防止します。12枚を貼り合わせられたら適当な台の上に乗せます。ここでは丸椅子5脚を利用しました(出入口以外の場所に設置)。この時点では天井は開いていますので、作業が難しい上部の貼り合わせ部に容易にアクセスすることができます。その後、天井部分をはめ、丸椅子の上に乗せた結果開いた下部を覆うダンボールを切り出して(出入口は別体にする)はめると内部は真っ暗になり、ドームは完成します。
ドーム内部  星空投影器は「大人の科学マガジンBEST SELECTION 01 ピンホール式プラネタリウム」を使用しました。この投影器はただでたらめにピンホールが開いているわけではなく、実際の星空を再現するように作られており、かつ、月日時を決めるとその時点での星空を再現できるという点で理科教材としての価値があります。この投影器の明かりの位置をドーム赤道平面中心になるように投影器を置きます。その設置法については、ドーム天井部分中心の天頂位置にフックを取り付け、下げ振りを下ろすことでドーム中心を示すマークを床に印し、その真上の赤道平面上に投影器を置くことで精度を出しました。下げ振り用フックを取り付けることができるのは天井部分を別体にしてシームレスにしたことの思いがけない効用でした。加えて、フックがあることで天井部分を内側から「引っ張る」ことができるため、はめ込みが楽にできるのも天井別体方式の(作ってはじめて気づいた)利点です。
 なお、製作に先立って設計に誤りがないことを確認するため、実物の1/6模型(直径400 mm)を工作用紙で作成し、設計に問題がないことを確認しました。組み立て手順を考える上でも有効でした。
(2025年1月9日)